このページを訪れてくださったということは、
きっと画面越しに、この作品を見て

「なんか、惹かれる。」

と感じて頂いたからではないでしょうか。

もしそう感じて頂けたのであれば、
もう一度、この作品をよく見てみてください。

実は、この作品。

少し不思議な「首里城」なのです。

首里城なのに、
首里城が主役では
ありません。

一般的に
「首里城を描いてください」と言われたら、
多くの人が、あの鮮やかな朱色の正殿を
大きく描くのではないでしょうか。

しかし、この作品を制作した
紅型職人・金城昌太郎は違いました。

正殿は、左上にちょこんと描かれているだけ。

作品の大部分を占めているのは、

首里城を囲む、石積みの外壁です。

なぜ、首里城を描くのに、
首里城の建物を主役にしなかったのでしょうか。

実は
この作品が生まれた背景には
金城昌太郎らしい
ひとつの物語があります。

金城昌太郎が
真夜中の首里城で
見つけた美しさ

この図案が制作されたのは、今から20年以上前。

金城昌太郎は、首里城を何度も訪れ、
自分の目で見て、スケッチを繰り返していました。

そして、私が聞いた話では、

この図案は、実
際に真夜中の首里城をスケッチして制作したものです。

昼間の首里城であれば、
鮮やかな朱色の正殿に目を奪われるかもしれません。

しかし、真夜中の首里城。

昼間とは異なる静けさの中で、
何を美しいと感じたのでしょうか。

その答えのひとつが、この作品に表れているのではないかと、私は思っています。

華やかな正殿ではなく、

長い年月、
沖縄の風土とともにあり続けてきた石積み。

そこに美しさを見出したのではないでしょうか。

実際、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の構成資産として登録されているのは、復元された正殿そのものではなく、「首里城跡」です。

その歴史を感じさせる石積みを、
作品の主役にする。

私は、この構図を見るたびに、

「本当に金城昌太郎らしい作品だな。」

と思うのです。

真夜中の首里城を
藍色一色で表現

色彩を抑えることで、華やかさとは異なる、静
かな美しさが生まれました。

私は、この藍色の首里城を見ていると、
どこか心が落ち着くような感覚になります。

そして、不思議なことに色が少ないからこそ、
石積みの形や図案そのものの美しさに
自然と目が向くのではないかと思います。

鮮やかな紅型も美しい。

でも、藍色一色の紅型も美しい。

同じ図案で、
まったく異なる美しさを表現できる。

それも、
金城昌太郎の作品の魅力のひとつだと思っています。

なぜ、金城昌太郎は
石積みを主役にしたのか。

この作品を制作した金城昌太郎は、
沖縄県指定無形文化財技能保持者である紅型職人です。

現在87歳。

60年以上、琉球紅型の創作活動を続けています。

しかし、金城昌太郎には、
一般的な職人とは少し異なる制作姿勢があります。

それは、

お客様からの注文を、一切受けないこと。

一般のお客様だけではありません。

問屋様や小売店様からの注文も受けず、
60年以上、
自分が創りたい作品だけを制作してきました。

その理由は、若い頃に決意した、
ひとつの信念にあります。

「貧しくても良いから、自分の美学を貫こう。」

沖縄らしい紅型をつくるためには、
沖縄の自然を自分の目で見て、
スケッチしなければならない。

そう考えた金城昌太郎は、
誰かから求められる図案ではなく、

自分自身が美しいと思ったものを作品にする。

という生き方を選びました。

だからこそ、首里城を描くときも、
誰もが知る正殿を大きく描く必要はなかったのだと思います。

自分の目で見て、

「ここが美しい。」

と思った石積みを、主役にする。

たとえそれが
一般的な首里城のイメージとは違っていても。

私は、この作品の構図にこそ、
60年以上貫いてきた美学が表れていると思っています。

87歳の今も、
全工程を自らの手で。

この作品は、

図案、型彫り、糊置き、色挿し、隈取りなど、

紅型作品が完成するまでの工程を、
金城昌太郎自身が一人で手掛けています。

現在87歳。

それでも、
弟子に作品づくりを任せるのではなく、

今なお自ら工房に立ち、
自分自身の手で作品を制作しています。

なぜなら、

「金城昌太郎の作品」として世に出す以上、

そこにあるのは、
金城昌太郎自身が美しいと思った世界でなければならないからです。

価格について

こちらの作品は、

150,000円(税込)

で販売しております。

決して、気軽に購入できる価格ではありません。

だからこそ、

「沖縄県指定無形文化財技能保持者の作品だから」

「世界遺産の首里城を描いているから」

という理由だけで、
無理にお選び頂きたいとは思っておりません。

もちろん、そうした背景も作品の魅力のひとつです。

しかし、何よりも大切にして頂きたいのは、

「私は、この作品が好きだ。」

という、ご自身の気持ちです。

首里城なのに、正殿が主役ではない。

華やかな色彩ではなく、藍色一色。

そして、その背景には、真夜中の首里城を実際に歩き、自分が美しいと思った風景を作品にした、ひとりの紅型職人がいます。

もし、この作品を初めてご覧になったとき、

「なんか、惹かれる。」

と感じて頂けたのであれば、

その直感を、大切にして頂けたら嬉しいです

良いものとは、
誰かに決めてもらうものではない。

有名だから。

高価だから。

みんなが評価しているから。

もちろん、
それも作品を知るきっかけのひとつだと思います。

でも最後に、

「私は、これが美しいと思う。」

と決めるのは、
自分自身です。

それは、
60年以上、

「自分が美しいと思うものをつくる」

という姿勢を貫いてきた
金城昌太郎自身の生き方とも、
どこか似ているのかもしれません。

誰かに見せるためではなく、

誰かに価値を説明してもらうためでもなく、

自分の目で見て、

自分でその美しさを感じ、

「私は、この作品が好きだ。」

と思える。

そんな方のもとで、
この作品を愉しんで頂けたら嬉しいです。

この「首里城」の額装を、
東京でご覧いただけます。

写真では伝えきれない、
紅型の美しさがあります。

87歳の今も、
自らの美学を貫き続ける金城昌太郎。

その手から生まれた「首里城」の額装を、
11月14日・15日の2日間、
東京・京橋で展示いたします。

作品を間近で、
ゆっくりとご鑑賞いただける時間もご用意しました。

最後に

なぜ今回、私がこの作品をご紹介しているのか。
その理由を少しだけお話しさせてください。

この作品を制作した
紅型職人・金城昌太郎は、私の父です。

幼い頃の私は、
物心ついたときから白い画用紙を渡され、
毎日のように絵を描くことを求められていました。

父が紅型師として
何より大切にしていたことは、

「自分の目で見て、スケッチすること。」

しかし幼かった私は、
その重圧から、
いつしか絵を描くことそのものが
大嫌いになってしまいました。

父はそんな私を見て、
紅型の技術を教えることは
一切しませんでした。

ただ一言、

「紅型以外の道なら、何をやってもいい。
自分が本当にやりたいことをやって
楽しく生きなさい。」

と言われて育ちました。

転機は20代後半。

世界中を旅する中で出会った青年実業家から、

「沖縄には世界に誇れる工芸がある。
世界各国を見て回って、そう思わないか?
金城君♪」

と言われ、

生まれて初めて、
父の仕事に興味を持ちました。

弟子入りを志願するも断られました。

それでも、
世界を旅したときに感じた直感を
忘れることができず、

伝統工芸に関わる仕事を続けながら、
父の足跡を探し続けました。

そして知ったのは、

父が60年以上、
売れるものをつくることより、

自分が美しいと思うものを
つくることを選び続けてきた

ということでした。

この首里城の作品は、
そんな父の生き方が、
とても分かりやすく表れている作品だと
私は思っています。

首里城を描いているのに、
華やかな正殿ではなく、

長い年月、
沖縄の風土と共に残ってきた
石積みを主役にする。

そこには、

「みんなが美しいと言うものではなく、
自分自身が美しいと思うものを見る。」

という父の美学があります。

もし、この作品をご覧になったあなたも、

肩書きでも、

流行でも、

誰かからの評価でもなく、

ご自身の目で

「私は、これが美しい。」

と感じて頂けたのであれば、

父が20年以上前、
首里城を何度も歩きながら見つけた美しさを、

これからは、
あなたの好きな場所で
愉しんで頂けたら嬉しいです。

最後までお読み頂きまして
ありがとうございます。